学校法人玉手山学園は、建学の精神に「感恩」を掲げ、1942年に大阪府柏原市(浪速の河内国分の地)に創設され長い歳月を重ねて来ました。超高齢社会を目前に控えた1997年には、建学の精神に基づき「福祉科学」の知識・技術を体得し、人の幸せを願う豊かなこころで「福祉科学」を実践する人の育成に取り組み続けるべく、関西福祉科学大学を設置しました。そして、2010年1月には、関西福祉科学大学に「総合福祉科学学会」を創設しました。
 2023年度現在、社会福祉、心理、健康、栄養、リハビリテーション、教育のそれぞれの専門分野において専門職養成を展開しております。人々の生活を支援する「福祉」は、ある特定の専門分化した領域にのみ特化するのではなく、それぞれの専門分野を包括し、総合的な観点から広い視野で物事を捉えていく必要性に迫られています。「総合福祉科学学会」は、それぞれの専門分野が専門分化するのではなく、社会福祉を土台としつつ、各専門領域からの対人支援について探求することのできる学会といえます。それぞれの専門分野の研究者がすでに獲得している自らの研究に関する原理や研究法を持ち寄り、相互理解・相互批判を繰り返しつつ「止揚」することによって新たな知見が生み出されます。さまざまな研究法による多方面からの研究者の参画が不可欠であり、ここに「総合福祉」と命名されている所以があるのです。関西福祉科学大学の使命として記述されている「臨床福祉」の概念を具現しようとするものです。
 「福祉科学」は、子ども、高齢者、障害者、生活困窮者といった特定の人を対象とするのではなく、「すべての人間が幸せで、豊かである社会を目指すあらゆる試み」へと対象を広げ、さまざまな取り組みを研究対象とする科学へと発展することを目指すものです。つまり、新しい学問領域の創成への道をたどり始めたことを意味しています。
 関西福祉科学大学が「総合福祉科学学会」を創設したのは、本来の福祉の語義に沿う「福祉科学」を独特の新学問領域として確立されて行くプロセスを、玉手山学園教員が担おうとする意図を含んでの新たな取り組みと位置づけるためです。したがって、「総合福祉科学学会」の特長は次の通りです。「新領域である福祉科学を学問分野として確立させることを企図する志を共有するメンバーから生まれた学会」であり、「豊かな福祉社会構築のためのさまざまな試みを内包する学会」であります。
 本学会の主たる構成員は、本学教員、本学大学院生としています。一方で本学会は、「福祉科学」を実践・発信できる学術研究基盤の推進、「福祉科学」の研究者、実践者の相互理解、研鑽、情報交流、共同研究の推進の場でもあります。賛助会員として学外の方々の参加も歓迎しています。また、関西福祉科学大学の卒業生の皆さんの職務の質・能力向上の場としてもご活用いただけます。多くの方々の参加を得て広く強く「福祉科学」を発信、実践していくことが私たちのねらいです。
 本学会の運営にご尽力、ご支援いただいている多くの方々に感謝し、多くの参加者を得て活発な学会活動に育っていくことを祈念します。

2023年4月1日
総合福祉科学学会  会長
関西福祉科学大学 学長  津田耕一